生体内のヒアルロン酸は通常、分子量数百万の高分子として存在している。グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンからなるムコ多糖類のひとつである。
生体内では眼の硝子体のほか、皮膚、骨、血管、内臓、関節液などに細胞間物質として多く存在する。
体内で最も多くヒアルロン酸があるのは皮膚であり、成人で平均7〜8グラム、体全体のヒアルロン酸総量の50%を占めている。
真皮のほとんどは細胞外マトリックスであり、細胞がまばらであるのに対し、表皮は角質細胞が詰まっていて、その細胞外マトリックスは、2〜3%ほどである。表皮の細胞周辺のマトリックスのヒアルロン酸の濃度は、真皮の濃度よりも高いものとなっている。
皮膚の角質細胞のヒアルロン酸は、活発に合成と分解を繰り返していて半減期は短く1日以下である。
軟骨中のヒアルロン酸の半減期は、正常で2〜3週間であると言われている。
生体内の3分の1のヒアルロン酸が、平均1日のあいだに代謝されて置き換えられる。
生体内で作られたり、サプリメントなどで内服摂取されたヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼという酵素による代謝で減少していく。
加齢によって体内のヒアルロン酸合成量は減少し、40歳後半から減少が始まり高齢者になると急激に低下する。
【出典】Longes MO.et al.:Evidence for structual changes in dermatan Sulfate and hyaluronicacid with aging. Carbo-hydr.Res. 1987;159:127~136医学応用の歴史は長く、眼科及びその他の手術に広く使われている。変形性関節症の関節腔内注入は、ひざの痛みや炎症の保存療法として最も頻繁に提供されている治療法の一つである。
ヒアルロン酸はグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの2糖を最小単位とする糖質である。多糖としてのヒアルロン酸は一本鎖構造で、でんぷんやグリコーゲンのような枝分かれ構造ではなくて、ところどころに疎水結合があり、蜂の巣様の構造を持っていることが報告されている。
ヒアルロン酸が分子量に依存して粘弾性を増すのは、このような分子構造のためと考えられている。
注入治療に使われるヒアルロン酸製剤は、一本鎖状となった高分子が折り重なり、網目状構造を作り出している。
ヒアルロン酸製剤の粘度は濃度や分子量によって異なり、濃度が高く分子量が大きいと粘度が高くなる。
粘弾性物質のため非常に高い粘性と弾性を持っているので、その特性を活かして輪郭形成(コントアリング)のための注入治療に使われている。
ヒアルロン製剤には水分保持機能がある。1グラムで約6リットルの水分を保持することが出来ると言われている。
生体内のヒアルロン酸は代謝によって半減していくが、美容医療の注入に使われるヒアルロン酸製剤は皮下での吸収・分解を遅らせるため、ヒアルロン酸の分子間に架橋剤(BDDE)を用いて強固な結合構造を作っている。
ヒアルロン製剤に架橋構造があることによって、製剤が皮下に長くとどまり、代謝による分解・吸収されるまでの時間を遅らせることができる。注入治療の効果がより長く継続する。
ヒアルロン酸はシワの溝を埋めたり、額、顎、鼻筋の形成など幅広い施術に使われているが、それが可能なのは粘性や弾性が異なる、さまざまな種類のヒアルロン酸製剤が開発されているからである。
輪郭形成、特に鼻や顎に使用する製剤は、注入した後にその形状を維持する力の強さと拡散しにくい安定性が重要となる。
豊胸に使う製剤のひとつとしてもヒアルロン酸は使用されている。豊胸の方法はヒアルロン酸注入のほか、シリコンバッグ挿入、脂肪注入、脂肪肝細胞注入などがある。
美容医療を目的としたヒアルロン酸注入剤の中で、厚生労働省の承認を取得している製剤は現在、ガルデルマ社のレスチレン®シリーズと、アラガン社のジュビダームビスタ® である。
他の製品は、CEマーク(欧州連合地域で販売される医薬品の安全マーク)、 FDA(米国食品医薬品局)認証、MFDS(Ministry of Food and Drug Safety、韓国の食品医薬品安全処)承認、などがある。
レスチレン®シリーズ(ガルデルマ)
ジュビダームビスタ®シリーズ(アラガン・ジャパン)
クレヴィエル(アモーレパシフィック/AESTURA)
サージダーム(CORNEAL)
ベロテロ(MERZ/ANTEIS)
カイセンス®(CIRCA SKIN)
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