脂肪肝や高脂血症の治療を応用した痩身法である脂肪溶解注射は、脂肪細胞を減らし、リンパなどの循環改善と併せて形態を変える注射法である。
この注射はヨーロッパで始まった痩身法で、臨床医学で使用されるハーブ由来の成分を用いて行われてきた。欧米人の大きな悩みのひとつである腹部,大腿,上腕のセルライトを除去する目的として施術されてきたが、韓国では顔施術用の製剤を開発し、頬や顎などの脂肪を除去する「小顔輪郭注射」として人気の施術となった。顔面は腹部·臀部などに比べて代謝循環が良いため、脂肪溶解注射ではより効果を出せると考えられている。
顔や身体のサイズが大きくなるのは脂肪細胞の数が増えたのではなく、細胞細胞の大きさが変動することが原因である。成人になると脂肪細胞の数は変動しないため、脂肪溶解注射によって除去された脂肪が再生することはない。そのため、食事や運動によるダイエットと比較して、脂肪溶解注射はリバウンドしにくい痩身法として評価されている。ただし、この施術は脂肪の数を減らすもので、たるみを改善するものではないため、主に40歳代までのフェイスラインやボディに効果が期待できると考えられている。
当初開発された製剤は腫れや炎症などが頻繁に見られたが、その後製剤の研究が進み、ダウンタイムの短い製剤が開発された。使用する製剤は数種類あり、注入する部位および効果とダウンタイムを総合的に考えて選択する。
1980年代にドイツなど始まった脂肪溶解注射は、高脂肪血症や肺塞栓の治療薬として承認されていたフォスファチジルコリン製剤であった。しばらくの間、脂肪溶解注射の有効成分はフォスファチジルコリンだと思われていた。
フォスファチジルコリンは水溶性ではないので、脂肪溶解注射の製剤には界面活性剤としてデオキシコール酸が配合されていた。その後、製剤の開発が進み、フォスファチジルコリンの単剤ができるようになったが、それを使用すると脂肪は溶解されず、炎症も起きなかった。
そのような過程を経て、脂肪を溶かしているのはフォスファチジルコリンではなく、界面活性剤として配合されていたデオキシコール酸であるということがわかってきた。米国ではデオキシコール酸単剤の脂肪溶解注射が生まれ、2015年には下顎部(二重あご)を適応症として、FDAの承認も得られた。
しかし、デオキシコール酸単剤の脂肪溶解注射は術後の炎症が強く、ダウンタイムを気にする患者には不人気であった。最近はデオキシコール酸を主成分にしつつ、炎症作用を抑える成分を加えた製剤がトレンドになっている。
また、海藻抽出物、アミノ酸の一種であるチロシンなどの脂肪分解作用を主成分とする製剤も登場した。おもに顔面のオトガイ、下顎部、頬部の局所脂肪減量が適応になっている。
主な製剤
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