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美容医療辞典

成長因子 | 臨床応用は1960年代から。 患者自身の治る力をサポートする注目のエイジング治療。


戻る 2024/12/03
 

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この記事の監修者
ドクターコネクト編集部

成長因子は細胞の活動を制御するシグナル分子

  • 成長因子は細胞の活動を制御するシグナル分子である。
  • 成長因子は固形組織の研究から明らかにされ、サイトカインは造血系や免疫系での体液を介した細胞間情報伝達の実体として明らかにされてきた。
  • 成長因子は細胞の成長や増殖にポジティブな影響を与える物質であり、サイトカインは免疫学的・造血学的な反応を示すと考えられていたが、研究が進むにつれて成長因子とサイトカインは似た機能を持つことがわかってきた。
  • 多血小板血漿やヒト幹細胞上清液に多く含まれる成長因子は、美容医療や整形外科分野などで使われている。

美容医療、自由診療で使われているのはPRPと上清液

施術は主に注射、点滴、エレクトロポレーションで行われる。

多血小板血漿PRP(Platelet Rich Plasma)

  • PRP(多血小板血漿)は患者の血液から組織の再生に関連する成分を抽出したもの。
  • 多血小板血漿PRP療法は患者自身の修復力を促進して改善に導く治療であり、患者の血液を使うため重篤な副作用なく利用できる。
  • 整形外科領域では、変形性膝関節症、筋腱靭帯の組織修復、痛みの改善。
  • 形成外科、皮膚科領域では、創傷・難治性潰瘍等の治療、美容(創傷・にきび痕)。
  • 口腔外科では顎骨再生、歯茎再生。

幹細胞上清液(Stem cell culture supernatant)

  • ヒトの幹細胞の培養増殖後、幹細胞を取り出した後に残る培養液を遠心分離、不純物などを取り出した後、ろ過、減菌、ウィルス検査などいくつかの処理工程を経たもの。
  • 美容皮膚科領域では、目の下のくま、しわ、たるみ、薄毛、抜け毛、FAGA。
  • 男性医療領域では、AGA、ED(陰茎海綿体の内皮細胞再生作用)。

作用機序と成長因子それぞれの機能

成長因子の作用機序

  • 成長因子は特定の受容体に結合し、関連する下流のシグナル伝達経路を活性化することで、核内での遺伝子転写を調節し生物学的反応を引き起こす。
  • 成長因子は標的となる細胞に反応を起こす。傷ついた部位に集まるホーミング効果がある。
  • 成長因子が引き起こす生物学的反応とは、細胞増殖、分化、アポトーシス、免疫・造血反応、形態形成、血管新生、代謝、創傷治癒、組織の恒常性維持など、さまざまな生理的プロセスである。

主な成長因子と働き

  • EGF(上皮成長因子)

上皮細胞の成長・再生・修復を行い、皮膚細胞をつくる。細胞の新陳代謝を促進することでシミ・くすみ・しわの改善につながる。

  • VEGF(血管内皮細胞成長因子)

血管内皮細胞の増殖に関わる。血行を良くする働きがあり、頭皮では発毛の促進、肌では新しい細胞を産生する。

  • aFGF(繊維芽細胞成長因子)

真皮内の幹細胞に線維芽細胞の増殖を促進する。SOD(抗酸化酵素)を増やす。新しい血管の形成や創傷治癒する。コラーゲンとエラスチンの合成に関わる。

  • PDGF(血小板由来成長因子)

損傷を受けた皮膚細胞の再生を促進する。コラーゲンの合成を促進する。

  • TGF-α・TGF-β(トランスフォーミング成長因子)

コラーゲンやエラスチンなどの結合組織の合成·増殖を促進。細胞の分化の誘発。肌の弾力性を増す、炎症を抑える、創傷治癒。

  • IGF-1(インスリン様成長因子)

創傷治癒。コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の生成を促進。毛根を刺激して毛髪を強くする。

  • HGF-1(肝細胞増殖因子)

細胞の老化を抑制して、末梢神経を修復する。

再生医療に関する法律

  • 再生医療等安全性確保法は、医療機関が再生医療等を提供しようとするときに遵守しなければならない事項を定めたものである。
  • 再生医療等安全性確保法は、臨床研究あるいは自由診療として特定の患者の再生医療を実施する医療機関に対する規制を目的としており、再生医療を行うために製造される細胞の加工物を「特定細胞加工物」と定義している。
  • 幹細胞治療には自家幹細胞と他家幹細胞があり、日本では免疫拒絶反応などの懸念から他家幹細胞を投与する幹細胞治療は認められていない。しかし、幹細胞培養上清については、細胞そのものが含有されていないため適合性等の懸念がなく、副作用も殆ど報告されていないことから、他家幹細胞の培養時に抽出される培養上清から作られる製剤が供給されている。
  • ただし、上清液(培養液)を得るために幹細胞を培養する際には「再生医療等安全性確保法」による認可を受けた培養施設であることが必要である。

医学的利用の歴史

事項
1960年代 細胞培養が可能になる。合成培地の開発が進む。
1970年代 血小板凝集塊に創傷治癒促進作用があることが発表される。
1980年代 間葉系幹細胞(MSC: mesenchymal stem cell)の概念が提唱される。
骨・軟骨・脂肪などの複数系統に分化しうる細胞の存在が明らかにされる。
1997年 PRPの初の臨床応用が口腔外科分野で実施される。
2000年代 人工多能性幹細胞(iPS細胞: induced plurirotent stem cell)が発見される。
2003年 変形性関節症モデル動物へのMSC浮遊液の関節内投与が報告される。
2012年 iPS細胞の功績で山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞。
2014年 再生医療等安全性確保法が施行される。

 

 

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