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美容医療辞典

ボツリヌストキシン | 臨床応用は1960年代から。 しわの改善だけじゃない、輪郭形成にも。


戻る 2023/05/24
ボトックス

微量でも強い生物活性を持つ毒素

ボツリヌストキシンの作用機序

  • ボツリヌストキシンは、自然界の毒の中でもっとも強力と言われている。
  • ボツリヌストキシンの作用部位は神経末端の、神経と筋肉の接合部である。
  • 神経が電気信号を伝え筋肉が収縮するとき、神経末端においてアセチルコリンが放出され筋肉に刺激が伝わるが、ボツリヌストキシンはこの神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害する。
  • ボツリヌストキシンは、A~G型の7種類に分類され、A型とB型が製剤化されている。

美容クリニックにおけるボツリヌストキシン

  • ボツリヌストキシンの筋弛緩作用を利用して表情筋を弛緩させ、しわの改善や皮膚のたるみの改善を期待する。
  • 麻酔の時間を除くと、実際の治療時間は短く、ダウンタイムも比較的短い。
  • 治療後、比較的速く効果が実感されやすい。通常、2〜3日後から効果が現れ、薬理効果は3〜4ヶ月持続する。
  • 注入から7日経つと効果が安定するため、観察の後、必要であれば微調整注入(タッチアップ)を行う。効果は個人によって異なるため、一週間後の観察は次回の注入を行うときの参考として重要なデータとなる。
  • 治療には、しわ・たるみの成因、表情筋、血管走行に関する知識が必要である。顔の血管は可能な限り避ける必要がある。出血斑が出るとクレームになりやすい。
  • 上顔面では、額、眉間、外眼角など。
  • 中顔面では、バニーライン、ガミースマイルなど。
  • 下顔面では、口角、上口唇、咬筋、おとがいなど。
  • 頸部のしわにも。
  • 顔面だけでなく、腋窩多汗症の需要も大きい。

美容以外にも、幅広い適応

  • 美容:しわ、下顎エラ、など。
  • 眼科:眼瞼痙攣など。
  • 皮膚科:腋臭、多汗症など。
  • 神経内科:顔面痙攣、上肢痙縮、慢性偏頭痛など。
  • 整形外科・麻酔科:頸部ジストニア、胸部出口症候群、梨状筋症候群など。
  • 歯科:ガミースマイル、歯ぎしり。

医学的利用の歴史と承認

  • A型ボツリヌス毒素の臨床応用は、神経内科や眼科で1960年代から行われてきた。
  • 筋緊張亢進を局所的に緩和する効果を、美容医療では表情筋によるしわの改善に応用されてきた。
  • 1989年に米国でアラガン社「ボトックス」がFDAの承認を取得した。
  • 日本での承認は以下の表のとおり
事項
1989 米国でアラガン社「ボトックス」がFDAの承認を取得
1996 グラクソスミスクライン「ボトックス」(ボトックス注用100単位/50単位) 「眼瞼痙攣」
2000 同じく「片側顔面痙攣」
2001 同じく「痙性斜頸」
2009 米国アラガン社「ボトックスビスタ」 65歳以下の「65歳未満の成人における眉間の表情皺」
2010 「上肢痙縮」および「下肢痙縮」
2012 「重度の原発性腋窩多汗症」
2015 「斜視」
2016 「65歳未満の成人における目尻の表情皺」
2018 「痙攣性発声障害」
2020/6 独メルツ社の「ゼオマイン」(筋注用50単位、筋注用100単位、筋注用200単位)が「上肢痙縮」の適応で承認(帝人ファーマ)

表情筋を対象とした一般臨床試験

  • 2001年、ボトックスビスタ®の一般臨床試験が行われた。眉間の表情筋を対象として有効性と安全性が検証された。

  • しわの改善率は7日後、30日後、60日後で、それぞれ91.7%、92.6%、83.2%。

  • 全体の36%に副作用(眼瞼下垂など)が見られたが重篤の症状は無い。

  • この臨床試験の結果によって、日本人における眉間の表情筋に対するA型ボツリヌス毒素の効果と安全性が確認され、2009年に美容目的として承認された。

  • 承認された対象は「65歳未満の成人の眉間の表情しわ」。

 

 

毛穴縮小効果で皮膚の見た目もアップ

ボツリヌストキシンは神経筋伝達を阻害するが、その他にも毛穴と皮脂腺の収縮作用もあるため、ボツリヌス注入後に皮膚の肌理が細かくなるという効果も期待できる。

 

 

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