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美容医療訴訟にどう対応する?リスクから費用まで解説|Winslaw法律事務所 今田弁護士


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経験豊富で頼れる敏腕弁護士
Winslaw法律事務所 今田弁護士独占インタビュー

今回、今田弁護士にインタビューを依頼したきっかけは美容医療施術相談件数が過去12,000件以上1と多く寄せられ、それに伴い、医療関係訴訟の新受件数も2004年までは減少傾向にありましたが、再び増加傾向にあり、現在までに16,000件以上2あります。トラブルを未然に防ぐためにはどのようにすればよいのか、万が一起きてしまった場合に弁護士に相談する上で必要な物など、実例も併せて今すぐに対策できる内容を伺いました。
 

■弁護士情報

今田弁護士
 

弁護士 今田 覚(いまだ さとる)
所属 第一東京弁護士会 No.45646
経歴 早稲田大学法学部 卒業
早稲田大学法科大学院 修了
 

1.美容医療施術トラブルでのご相談例を教えてください

今田弁護士
実際の患者さん(以下、相談者)側からのご相談になりますが、守秘義務の関係もありますので詳細はお伝えできませんが、内容は美容皮膚科でリフト系の施術を受けたが「思ったような効果が出ていない」、「施術説明も聞いていたのとは違う」というケースで、クリニック側から多額を請求されたが料金を支払えないという内容になります。結果、クリニックの代理人と話しをして、減額や分割をして支払うことになりました。

「美容医療・自由診療」に比べ、「保険診療」でのご依頼はそれほどありません。圧倒的に今は美容医療が多いと思います。保険診療になりますといわゆる「医療過誤(いりょうかご)」と言われる部類になりますので、かなり大きい事件になります。例えるなら、ニュースで報道されるような病院の診察ミスで亡くなってしまった事件になりますので、それほど数は多くありません。

2.「本人公訴」と「弁護士訴訟」の判断と実際に相談者が用意するものは?

今田弁護士
本人訴訟も可能ですが、専門性が高いため裁判所も代理人を就けることを勧めるケースが多いです。ご相談いただく場合には相談者が用意しておくものとしては、施術の同意書と当時の説明内容で記憶が残るものはエビデンスとして準備しておく必要があります。インフォームドコンセントによる事例が一番多いかと思いますので、その場合には訴えられる想定は基本的にクリニック側になります。クリニック側から「費用を支払ってください」と言われ、それに対して「対応できない…」となります。ですので、訴える側は基本的に施術を受けた相談者になります。

もし相談者がクリニック側の場合には同意書等の説明資料を備えておく必要があります。 これはクリニック側が事前に気を付けるべき事ですが、患者さんには施術内容を明示した上、効果についてもきちんと説明しなければいけませんので、それらを説明したということを形にして残しておかなければなりません。 後に「言った」「言わない」の話しになりますと、それらの証拠が無ければ証拠不十分となりますので、相談者側もクリニック側も準備しておくものではほとんど同じです。

クリニック側は費用のトラブルや効果のトラブルも事例として多いと思いますので、当然、費用の説明もしなければなりません。施術後に「高額請求をされた」と言われないように、クリニック側としては費用の説明などを証する書面と、見積もりを一緒に渡しておくことが重要です。効果についても「正確に説明した」ということを形にしっかりと残さなければなりません。また、クリニック内部とは言え費用を説明するときには第三者が立ち会うなど、マニュアル化しておくといのも大事なことになります。

その他には「聞いていた話しと違う!」という案件も多いと思いますが、その場合は請求される側というのはクリニックになります。構造としては費用を支払ってくださいとクリニック側から言われ原告が対応することになりますが、クレーム内容を指摘するのは患者さんになりますので訴える側というのは患者さんになることが多いです。 その場合に患者さんがご用意いただくものは、どのような説明をされたか記憶がきちんと残るエビデンスと同意書が必要になります。対してクリニック側が気を付けることはどのような施術をするのか、効果についても「正確に説明した」ということを形に残さなければなりませんので、クリニック側がしっかりと備えておく必要はあります。

3.裁判費用について教えてください。

今田弁護士
代理人を立てるのであれば弁護士費用が必要です。費用は経済的利益によって変動しますが、弁護士報酬でかかる費用は「着手金」と「報奨金」の2つになります。 例えば、着手金が求める経済利益が300万円までの場合は、一律で決まっている旧報酬基準で着手金が8%、報奨金は16%が相場になります。経済的利益とは、例えば相談者が損害賠償で500万円請求し訴訟を起こした際に、クリニック側として過失は無かったので損害は0円ということであれば、求める経済的利益は500万円になります。 または、クリニック側が200万円請求し、患者さん側が50万まで認める場合には争っているのは150万円になりますので、150万円が経済的利益となります。300万円を超え3,000万円までであれば、この割合が下がり着手金が5%+9万円、報奨金は10%+18万円が弁護士費用で必要になります。

その他には、裁判を起こす場合に必要経費として裁判所に納める「印紙代」と「郵便切手代」が必要になります。訴えられる側は、基本的に費用は掛かりませんが、訴える際に裁判所に納めるもので、訴える金額によって多少の変動はありますが、1万円~数万円程度になります。また、医療訴訟になりますと鑑定や第三者の医師による意見書などが想定されますので、別途鑑定費用として数十万円かかる場合もあります。

Winslaw法律事務所

これらの費用負担は「有利な方」になります。訴える側は「立証責任」として証明をする責任を負っていますので、責任を果たせなかった場合には負けてしまうということになります。 通常は訴える側が証拠収集の一環として意見書を提出する場合がありますが、必要と思えば意見書を書いてもらい提出しますし、両方とも提出をする可能性はあります。

4.裁判費用はどちらが負担しますか?

今田弁護士
どちらかと言えば裁判に負けた方になります。ただ、「訴訟費用」に含まれる鑑定の費用や訴訟の印紙代などは、判決の場合、結果が細かいものですと1/3は原告が負担し、2/3は被告が負担するというケースもあれば、完全に100対0で負けたという話であれば被告側が全部負担するというケースもあります。一番多いのは「和解」で終わるケースです。各自で掛かった費用は各自で負担し、最終的にはそれぞれ、それまでに負担したものは相手に求めることはしないということが一般的です。

身近な例で挙げますと交通事故と似ています。 必要事も専門性は高く、証拠収集の仕方は違うとはいえ裁判所による認定の仕方は「証拠に基づいて認定をしていく」という事では一緒になりますので「事実認定のためにどのような証拠を提出しなければならないのか?」という部分で共通しています。

判決・和解には早いもので半年から1年、長いものですと2年くらいはかかります。医療過誤のような大きいものは金額が大きいこともあり、一審が終わった段階でもかなりの月日が掛かります。日本では一つの事件で3回まで審理を受けられる「3審制」が採用されていますので、控訴して最高裁に上告するということを3回繰り返せば何年もかかることはあります。

私が取り扱っている訴訟で最長期間は2年くらいです。 解決までに時間を要するものに関しましては、当然お互いが主張をしていきますので専門性が高い分、提出している証拠だけでは足らないということもあります。 裁判所への提出物の準備にも時間がかますし、提出物だけでは裁判所も判断できないところがありますので、争点を整理していくのには長い期間が必要です。

先ほどの例で言いますと原告側(患者さん)からすると手元に資料は無く、所持しているのはまさに相手のクリニック側になりますので、その部分を精査しなければなりません。

資料に関しましては原告が直接貰いに行くこともできますし、資料を出さない場合には裁判所から資料の提出命令がでます。

5.「和解」と「判決」の割合は?

今田弁護士
和解と判決の割合は8:2で和解の方が多いです。 判決になりますと勝ち負けがはっきりしている分、憎しみあって終わる事もありますので、そういう意味では裁判所側も含め和解で終わらせたいというのが心情です。ですが、ある程度は裁判所側も心証を掴んでからではないと和解の話を切り出しづらいのも現状です。判決よりも和解の方が控訴されるリスクはありません。ただし通常の訴訟に比べますと時間がかかる割合は高いです。判決好きの方もいらっしゃると思いますが裁判所側は少なくとも好きではありません。 また、いくら固い内容でも100%勝つ補償はなく負けるリスクというのは絶対にありますので、依頼者が納得されるのであれば普通は「和解で終わりたい…」と思うはずです。

6.「和解・判決」、「勝ち・負け」での費用差は?

今田弁護士
弊所は和解と判決で費用は変わりませんが、判決の勝ち負けは成功報酬に反映されます。得られた経済利益によって着手金と報奨金が変動しますので、いただける報酬はその分高くなります。ただ、和解よりも判決の方が高い報酬を得られると思う方もいらっしゃいますが、そうとも限りません。

例えば、Aさんが300万円請求し、Bさんは100万円までは認めているケースでは、間の200万円で揉めているということになります。この場合、判決の結果は100万円 or 300万円という結論がでますが、和解により200万で終結したとします。この場合、Bさんからすると100万円上がっていますが300万支払わずに済んだことになり、Aさんからすると300万円より下がっていますが、もしかしたら100万になるリスクもあったとことを考えれば上がっていることになります。 求めているものより金額が下がってはいますが、一応納得ができる解決ということになります。結果論としてその後「和解を受けない方が良かった…」ということは起こり得ますが、和解が成立した段階では「和解を受けて良かった」と思う方の方が多く、双方の雰囲気も険悪にならずに終息します。 時には白黒つけることは必要ですが、終わった後にシコリを残すということも有りえますので、和解できるのであれば一番いい解決方法です。

7.病院・クリニック顧問弁護士で多い相談事は?

今田弁護士
クレーム対応になります。実際にご相談されたクリニックの例ですと、お金の請求ではなく嫌がらせをされることがあり、実際にクリニックの周りに何かを貼られてしまったり、風評被害にあったり、電話で少し脅迫じみたことを受けたなど、内容が少し過激で刑事事件になるようなケースです。このような場合には警察に相談です。いくらこちら側が正当なことを言っても真に受けない人も当然いますので、身柄を拘束してもらうのが安全です。もちろん、警察相談に行く場合も立ち会いますので、その際に被害届を出すことをお勧めします。

個人事業主の方や企業から顧問弁護士の依頼は多く、月5万円程度で承っております。日常的な法律相談も含め、普段からクリニックの内情を把握していますので対応しやすいというメリットもあります。

また、顧問料の範囲では簡易な法律相談が中心となり、個別の事件については事件ごとに費用が必要になりますが、顧問契約をいただいている依頼者様には相場の7割の価格で事件をお受けしています。

8.医師の診察で気を付けることは?


今田弁護士
先にも述べた通り、証拠を残しておくというのは当然ですが美容クリニックのケースになりますと、患者さんへの説明の仕方や、説明内容に納得しているかが重要です。 費用の提示方法は色々あると思いますが、場合によってはマニュアル化することをおすすめします。ただし、説明通りの施術を行う際に失敗してしまったという場合には、責任を負わざるを得ません。 日常的にクレーム対応するのは業務に支障をきたすところもありますので、クレームを減らすという意味では何かあった場合でも「自分のクリニックではこういう説明をしている、こういう書面も渡しているので全く問題ありません」と主張できるように整えておくというのが大切です。 一番は患者さんに納得をしてもらうことに尽きると思います。

施術前の説明で押さえておく要点はリスクを含めた「施術結果」と「費用」についてです。 保険診療の場合は、例えば癌があり切除するという内容であれば分かりやすいですが、「こういう顔にしてください」「ここを綺麗にしてください」という場合には、病を治すという話ではありませんので、効果が実感できなければ納得いただけません。つまり、施術結果の出来上がりを過大に説明しないということです。多少誇張することはあるかもしれませんが、やはり医療機関になりますので事実を説明することが護ることに繋がります。

9.施術後「イメージと違う・バランスが1mmおかしい」のジャッジは誰が?

今田弁護士
バランスは難しいところですね。 保険診療や美容医療に関わらず、いずれにしても医師との契約は「準委任契約」と言われる契約になります。「請負契約」という類型もありますが、請負ではこうすると言った場合にその完成品を持ってこなければなりませんので「綺麗にする」と言った場合には基本綺麗にしなければいけません。 しかし、医師とクリニックの契約と言うのは結果を保証するものではありませんので、請負契約ではなく準委任契約になります。 クリニック側は業務で何をお願いしているかによって、実際に施術した業務との間にギャップがある場合にはその部分がトラブルになります。

請負契約では「こうします」と説明して結果が違う場合には債務不履行になりますが、準委任契約の場合には結果だけを見るわけではありませんので、依頼した業務の過程を見るのであり、その中で一番大事なのは患者さんへの説明の部分です。

例えば「目を二重にします」と説明した場合に、何となくでも「二重になっていなければおかしい」と言うことになります。医師側から見ると「二重にするための手術」をすればいいので、結果二重になっていなくても理屈上は仕方がありません。しかし患者さん側からすれば当然、二重になっていなければ納得がいかない話になります。「二重にするための手術はした」=>「けれども結果ならなかった」これは、本来債務不履行ではありません。そうなりますと、それは請負契約ではありませんので「結果が違っても仕方がないのですよ。」と言えます。ただクリニック側に「”結果が違う可能性もある”という説明をしていたか?」を確認すると、「していない」となるケースが多いのです。そうなりますと「二重になります」という説明に対しては、準委任契約であろうが債務不履行になりますので損害賠償という話になります。トラブルを予防するということは、しっかりと説明して納得してもらうということが重要です。

10.医療機関と医師での訴訟は?

今田弁護士
私は受けたことはありませんが報酬面などになるかと推定はできます。 普通の会社員とは業務が異なりますので微妙なところではありますが、残業代が支払われているかなどは結構あるとは思います。その他は、独立して新規開設するときにどのようなスキームで進めるかという相談はあります。管理医師として二重登録はできませんが、中には違法な名義貸しみたいな噂も聞いたことがありますので、今後そういったご相談は増えてくるかもしれません。

11.自由診療vs保険診療のリスクイメージは?

今田弁護士
金額面で自由診療の方がリスクは高いと思います。病気を治してもらうために通う保険診療とは違い、自身が積極的に良くしようとクリニックに来院しています。希望を持って高い料金を支払ったのに結果違うとなれば、やはりトラブルになりやすいです。病気の場合は少しでも体調が改善されればクレームを言う気にならないと思いますが、自由診療はそうはいかないと思います。

12.少額でもお金は取り戻せるのか?

今田弁護士
例えば10万円で施術をしてもらい、効果が説明と違うことから「10万円返してくれ」という訴訟を打つとします。 この場合、10万円取り返えせたとしても弁護士費用で20万円掛かってしまうのであれば意味がありませんので、訴訟や弁護士に依頼する場合はある程度の金額に達しないと難しくなります。 ただ、繰り返しになりますがクリニック側としては、訴訟を起こされれば応訴しなければなりませんので、場合によっては風評被害や、あることないことを書き込まれてしまうことが損害になります。それを未然に防ぐことが大切です。

13.相談の流れ

今田弁護士
まずはご予約をお取りいただいた後にお越しいただき面談をします。 その際にお持ちの資料確認をした上で方向性を示いたしますので、ご納得いただければ委任契約を交わし進めていきます。例えば、クリニック側の相談ではカルテや診療記録、どのような説明をしていたかの聞き取り作業になります。きちんと説明をしているのであればクリニック側も義務を果たしていますので、患者さん側から訴訟を起こされても動じることはありません。また、多少説明の内容が足りなかった場合には、もう一度代替で施術をする案を出すか、費用についてお返ししますのでこれで「もうお互い無しにしませんか?」という話しをするなど、色々解決方法があるかと思います。トラブルによっても違いますが、まずはこちら側が持っている手持ち証拠の確認です。

14.和解の費用や決まり事は?

今田弁護士
決まりは特にありませんが和解の仕方にも色々あります。裁判官と各代理人が全員居る中で話をするケースもあれば、代理人が片方ずつ交互に話を聞くということもあります。交互に話を聞く場合には裁判官から負けるとまでは言われませんが、「ここは厳しいから譲歩した方がいい」と率直に意見を言ってくださる方もいますので、訴訟でどれぐらいの敗訴リスクがあるのかというのをお互い確認しながら決めて寄せていきます。また、「落としどころは、このくらいがいいと思います。」と裁判所側から提案されることもありますので、その場合は大体纏まるケースが多いです。

15.医師と医療機関の契約トラブル

今田弁護士
当然利益が対立しますので、弊所はどちらかといいますと相談を受けるのは企業側(使用者側)です。弁護士事務所によっては労働者側の事務所や企業側の事務所、両方取り扱っている事務所など色々あります。中には医師が退職時に割引した施術料金の返金を求められたこともあるそうですが、返金について契約書面上に記載していない場合、結論は割り引いた金額を支払っているのであれば返金する必要はありません。 当時社員割引が使える契約になっていたのであろうという推認できますので、もし辞職時に割り引いた金額を返さなければならないのであれば、契約書に割り引いた分を返金しますという内容をクリニック側が用意していなければ、返金についての情報はなかったという扱いになりますので、返さなくていいという結論になります。

16.顧問弁護士にご興味がある方へ一言

今田弁護士
医療機関としては、体制を整えておくことで患者さんも不満を持たずにご利用いただけますので、整備するということが全員を幸せにします。顧問弁護士は予防法務になりますので、クレームや紛争などに煩わされることもなく治療に専念でき、事前に備えておくことでトラブルになった時の損害に比べ、遙かにコストとして安くなります。医師や医療機関とともに、美容医療や自由診療の分野を良くしていき盛り上げていきたいと思っておりますので、是非ご利用ください。

Winslaw法律事務所の弁護士

 

■事務所情報

 
事務所 Winslaw法律事務所
HP https://www.bengo4.com/tokyo/a_13101/l_198869/
住所 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル8階827区
TEL 03-6256-0004
 
※1 独立行政法人 国民生活センター 相談事例・判例 各種相談の件数や傾向 美容医療サービス参照( 2017-07-25)
※2 裁判所ホームページ 医事関係訴訟事件の処理状況及び平均審理期間参照( 2017-07-25)


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