医師の転職、それも自由診療クリニックへの転職は収入の大幅アップは珍しいことではありません。しかし、年収アップを額面どおりに喜んでいても大丈夫なのでしょうか。
年収が倍になっても、その4割は所得税として支払うことになります。自分の収入の出口にあまり気を留めず、年収が増えたからと何も考えずにお金を支払っていたら、将来の資金がなかなか貯まらないということになるかもしれません。
医師を始め、高額所得者や資産家をクライアントに持つ税理士の中峰貴之先生に、節税、資産防衛、資産形成のスペシャリストとしてのご意見を伺いました。
──相続や資産形成がご専門と伺いましたが、税理士には専門があるのですか。
中峰 税理士
医師に専門医や診療科目があるように、税理士にも得意分野があります。
まず、法人を専門にする税理士がいます。上場企業の顧問をされる税理士もおりますが、数では圧倒的に中小企業の顧問をしている税理士が多いですね。
そのほか、個人事業主に強い税理士もいます。医師、スポーツ選手、ホステスさん、保険のセールスマンなどがクライアントです。
私は、相続や資産形成、事業承継を専門としています。申告が必要になる相続が発生するのは、年間で4〜5万件ですが、税理士は全国で7万人以上いるので、相続の税務をほとんど経験したことのない税理士も意外と多いと思います。
相続は税務の中でも、専門性が高い分野で節税知識や資産防衛術が求められます。
──本日は医師の節税をテーマにお話を伺いたいのですが、医師の税金は何か特別な分野なのですか
中峰 税理士
そうですね。医師の場合、運営の形態が会社なのか個人なのかで異なってきます。そのため、会社としての節税なのか勤務医として給料をもらっている個人の節税なのか、そこで大きく違ってきます。
加えて、個人の方でも、どんな資産を持っていらっしゃるかで節税の方法が変わってきます。最終的に相続も含めて考える必要があります。
そういうことをすべて併せて最適な方法を検討するのが「資産コンサルティング」です。
──医師が税に関する知識を持つ必要はどういうところにありますか。
中峰 税理士
例えば、年収が2000万になったとしましょう。その場合、税金はご本人が考えている以上に高く、思っているより手取りが少ないと感じられると思います。そこで将来に向けた準備をどうするか、ということが重要です。独立開業、リタイアしたときの資産など、医師だからこそ考えておきたい備えがありますよね。
また、自由診療で開業なさっている方に関しては、医師であると同時に経営者でもあるので、会社経営者として税に関する知識は持っておかれるべきでしょう。
医療法人に関しても、一定の医療法人に関しては、相続税対策がしにくくなっています。また、医療法人から給料を多くもらうと、給料から所得税を最大45%払う必要があります。その上に、住民税も更に約10%かかります。そうなると、個人の節税も必要になるんですね。事業など個人でやられる事で節税につながることもあります。
■所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
1,950,000円以上 | 5% |
1,950,000円超 3,300,000円以下 | 10% |
3,300,000円超 6,950,000円以下 | 20% |
6,950,000円超 9,000,000円以下 | 23% |
9,000,000円超 18,000,000円以下 | 33% |
18,000,000円超 40,000,000円以下 | 40% |
40,000,000円超 | 45% |
──事業をやると節税になる仕組みについて伺えますか。
中峰 税理士
例えば、海外の中古不動産の賃貸があります。仮に1億円の物件を購入して賃貸した場合、その建物割合が高い国、例えばアメリカなど8割が建物価格となるものであれば、8000万円を償却可能で、しかも一定の要件を満たしていれば償却期間が最短4年となるため、年間2000万円を償却できることになります。
それに比べ、日本の中古マンションは購入価格の中の建物部分割合が土地部分に比べて低くなります。
そのため、日本で1億円の中古のマンションを買ったとしても、鉄筋コンクリートの物件では、償却期間が最短9年であったとして、年に数百万円しか償却費として使えないわけです。
ただし、海外投資で注意することは、人口が増えていることなど、いくつかの要件を分析しながら、不動産価格が基本的に上がっていくと予想されるものがいいと思います。
難しいことですが。資産保全という点では、海外不動産は検討すべき方法のひとつだと思います。資産を外貨などを含めて円以外で持っておくことにも意味があると思います。
──海外で不動産を所有すると申告が面倒ではありませんか。
中峰 税理士
確かに、ご自身で行うのは面倒になると思います。そのため当事務所では、申告は現地の税務に詳しい方に依頼しますし、お客様にしていただくことは書類を揃えていただくことがメインで、面倒なことはありません。海外とのやりとりも私たちが行います。
──不動産以外に、検討すべき方法はありますか。
中峰 税理士
個人で給料をもらっている方なら、個人事業を行うこともいいと思います。要件はいくつかありますが、製品のリース会社を経営するという方法もあります。
──副業と言っても、リース会社を経営するには、労力や時間が必要ではありませんか。
中峰 税理士
実際のリース事業はサブリース会社に一括して任せるなどの方法もあります。その契約を結ぶ以外には、特に手間や時間はそれほどかからない仕組みになっています。
──リース事業にもリスクはありそうですが。
中峰 税理士
賃貸マンション経営と比較すれば、その物自体に担保価値が無い分、リスクはあります。サブリース会社が倒産したりすると、自分で経営しなければならなくなってしまいます。
ただ、経営強化税制など、初年度で一括に経費にすることができて、投資額がその後の期間で回収できるのものもあります。こういうものは年収が急に上がった方には適しています。
もちろん、個人事業として青色申告しなければならないですが、節税効果はあります。
さらに年収が上がると翌年の住民税も上がるので、年収アップの機会には是非、対策を考えることをお勧めします。
──よく分かりました。だから、医師の転職の機会には節税のアドバイスが必要ということなんですね。節税の方法を検討する際に、気をつけるべきポイントは何ですか。
中峰 税理士
まず、契約の形ですが、投資にしても保険にしても、その会社と直接の契約を結ぶことをお勧めします。直接契約のためには、契約前にご自分でいろいろと調べることが必要になりますが、節税を成功させるためには大切なことだと思います。
私自身も自分で調べて比較検討し、実際にやっているのですが、もちろん、過去には失敗した経験もあります。自分でやってみた結果、良かったもの、それをお客様にはお話ししています。
ほかにも、投資を考える時に何をメインに考えるか、ということもポイントです。節税をメインに考えてしまうと投資の判断を誤る可能性もあるので、要注意です。
例えば、節税を目的とするあまり、3000万円の価値しかないものに5000万円を投資してしまうケースもあるということです。投資効果をメインに考え、結果的に節税になった、というものが良いと思います。
──生命保険が全額経費で落ちなくなったというニュースを見ましたが。
中峰 税理士
そうですね。以前はできていたけど、今は節税として使えない商品もあります。税制に関する情報は毎年、更新していかなければならないものです。それは、専門家である税理士にご相談いただくのが一番ですね。
ただ、考え方で、保険は元気な時に積み立てしておいててリタイアして収入が減ったときに、解約して活用するという、保険本来の活用方法はあると思います。退職金の無い、医師や税理士のような業種は、将来のための準備として必要だと思います。
──中峰 税理士はいろいろなケースをご存知でいらっしゃいますが、節税に成功なさっている方はどこが違うのですか?
中峰 税理士
「資産のつくりかた」がキーワードになると思います。それを知っている人と知らない人の差、は大きい。経費と浪費、そして投資の違いを分かっている方は成功なさっています。
お金を使うときに「これは資産になるのか。投資になるものなのか。」を自問自答していただきたいですね。何が資産になるか、は人それぞれです。投資にはモノだけでなく、ご自分が成長するための自己投資もあります。人脈を作るための投資もあるでしょう。
──「資産のつくりかた」と聞いて、固いお話なのかと思いましたが、将来の夢を考えるような楽しいお話ですね。これは具体的に誰がアドバイスしてくれるのですか。
中峰 税理士
資産について良く分かっている人、です。
医師のような、若いうちから高収入を稼ぐ方は、早いうちに「資産のつくりかた」を検討して、夢のある将来、余裕のあるリタイアに向けて、実際に動いていただきたいですね。
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