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インタビュー

美容の医師に必要な資質|芦屋美容クリニック小西院長


戻る 2022/02/18
芦屋美容クリニック小西院長に訊く「美容の医師に必要なもの」

芦屋美容クリニックは、2014年、兵庫県芦屋に総合的な美容医療の提供を目指したクリニックとして開院した。メディカルエステティックサロンとエクササイズ用スタジオを併設した新しい美容クリニックとして注目された。

紹介による顧客とリピート率が高く順調に成長し、2019年には東京に銀座院をオープン、銀座では芦屋ブランドのクリニックとして、特に大人の女性の人気を獲得している。

「関西人にしてみると、銀座はわくわくする街」とおっしゃる、院長小西和人先生にお話を伺った。

自然体で優しい語り口の中に、「やってみる勇気と何かあったらリカバーできる力、その2つがあれば何とかなる」とおっしゃる強さと自信が伺えた。

笑いあふれるインタビューの記録をお伝えしたい。
 

小児科、内科、眼科も考えたが、形成の道へ

──形成外科を選ばれたのは、どのような理由からですか?

小西先生

小西先生
外科系が良かったんですね。私の父は小児科医なのですが、どうせなら色々診たいよな、と思っていたところに形成外科から声をかけていただいて。

医局選びってクラブの勧誘みたいなところがありましたね。食事に誘われて「来たらいいことあるよ」と言われ、行ってみたら雑用ばかりだったり(笑)。

今は違うかもしれませんが、昔はそんな感じでした。

──形成外科の医局では、いろいろな手術を経験なさいましたか?

小西先生
もちろん、いろいろな手術を経験しました。

後から振り返ると、医局で教えていただいた先生方は本当に上手だったなと思います。

当時はそれが分からないんですね。自分で手術をするようになってから「あれは凄い手術だったんだ」と後から気づいたりしました。

──神戸大学医学部のご出身ですが、国立大学の医学部に美容医療があるのは珍しいですね。

小西先生
そうなんです。でも、私が医局に入ったときには無かったんです。

医局に入って2年目は外にいたのですが、外から帰ってきたら「美容外科」が出来ていました。そこで、「これはいいな」と思いました。

医局時代から独立を公言

──医局にいらっしゃったときから、美容で独立したいと思われていたのですか?

小西先生
美容というより、医局に入ったときから独立開業することは考えていました。

開業までは楽しいだけ

──なぜ、そのように早くから独立志向でいらっしゃったのですか?

小西先生
芦屋美容クリニックをオープンしたときから、ずっと言っていることなんですが、私は「社会人」になりたくて開業したんです。大学病院にずっと居たら、社会の動きが分からなくなってしまうと思って。

病院の中で、先生、先生って大事にされていると、余計、社会から離れてしまうんじゃないですかね。

開業したときにはスタッフの求人のために自分でハローワークにも行ったのですが、それも楽しかったですね。

もちろん、今は社労士さんに入ってもらっていますが、開業時には色々なことを全部自分でやって、すべて楽しんでいました。

──開業までのご苦労についてお聞かせください。

小西先生
開業するまでの苦労って、何(笑)? 開業してからの苦労はありましたが、開業までは楽しいだけでしたね。

神戸アカデミアクリニック(※1)を作るとき、全部やらせてもらったので、それが経験になっていたこともあって、実際、開業までの苦労は特になかったです。

※1 神戸アカデミアクリニック
神戸大学形成外科と連携する美容外科・形成外科クリニック。全国的にも珍しい試みのクリニック。2009年に開院。

自由診療はお客様のニーズを拾っていかなきゃいけない

──では、開業なさってからのご苦労というのは?

小西先生
こっちがやりたいことと、来られる方が求めていることが違うことでした。これには、始めは困りました。

ニーズを聞き取れるか、感じ取れるか、それは今の方がずっと上手になっていると思いますね。開業したての頃は、今よりもちょっとだけ頑固だったような気がします。

自由診療はお客様のニーズを拾っていかなきゃいけないですが、うちのクリニックは元のいい状態に戻すために何が必要かを、まず考えます。

「5年前の顔に戻す」というニーズは、これからもしばらくは変わらないと思いますよ。

人材雇用と定着の苦労、その先の楽しみ

──人材雇用でのご苦労はありましたか?

小西先生
芦屋は一から手探りだったので大変でした。東京はご紹介もいただいたりして、良い方が見つかって助かりました。

神戸や梅田なら来てくださるのですが、芦屋の求人は難しかったです。スタッフが定着してくれるまでが大変でした。

ある程度人数がいないと難しい、でも、売り上げが少なかったらそんなに人数はいらないし、そのバランスが難しいところです。

そして、売り上げがまだ少ない時に必要なスタッフと、売上が増えてきた時に必要なスタッフの資質が違うこともありますし。5人のチームの時に良いスタッフと、10人のチームになった時に合うスタッフもまた違うんですね。

今は、まだ20人くらいの規模なんですけど、これが100人の規模となったら、どんな違った景色が見えてくるのか楽しみです。

私自身にも、合っている規模があると思います。40代と50代の私では違ってくるでしょう。50歳までに、できるだけ多くの新しいことにチャレンジしようと思っています。

激戦区の銀座で「普通の事からスタートしよう」

──銀座は美容クリニックの激戦区でもありますが、事前に競合分析などは?

小西先生
特にしませんでした。競合のクリニックを見ても、良いところは良いし、悪いところは悪い、それだけです。

あまり他のクリニック見たことがないので、わからないですし(笑)。

銀座で開業するにあたっては、芦屋もあるので100%は関われないことが分かっていたので、とりあえず、芦屋で取り組んできた、私たちにとって普通の診療からスタートしようと思いました。

──芦屋と銀座、どのような頻度で働いていらっしゃるのですか?

小西先生
週4日を芦屋、残りの3日が銀座です。休みは少ないですが、やらなければしょうがないです、開けた以上は(笑)。

自分がやれば、目も届きますしね。

──芦屋と銀座で、違いはありますか。

小西先生
芦屋が何でもできる環境になるまで5、6年くらいかかっています。銀座は全く「知られていない」ところからのスタートですから、イチから始めた感じです。

とりあえずピコレーザーからお勧めして。始めから手術、手術、というクリニックは作りたくなかったので。

芦屋でも手術は全体の2割もないくらいです。「しわ、しみ、たるみ」というお悩みは、ほとんど何処も同じなので、芦屋も銀座もピコレーザー、注入、ハイフが中心になっています。

患者さんの年齢で言うと、芦屋は大人、銀座はやや若いかもしれません。やや若くてやや美容医療が未経験の方が多いです。

芦屋はご家族ぐるみで来てくださる方もいます。おじいちゃんのシミも取ってください、とか、自分の娘も眼を二重にしたいからやって、というような感じですね。

長く通っていただけるクリニックに

──クリニックのコンセプトは?

小西先生
特別なものはありませんが、とにかく長く通っていただくクリニックにしたいです。

そのために、次も来たくなるような感じで帰っていただくことが大事ですね。

例えば、注入で言うと「腹八分目」がいいです。

──「腹八分」、その塩梅はどうやって学ばれたのですか?

小西先生
注入そのものも誰も教えてくれませんでしたから、習っていないです。

今となっては、知りたいことも出てきたので、教えてくれるところに行くこともありますが、初めっから教えてもらうのは嫌いなんです。

どうやって学んだかと言うと、基礎を知ったうえで、どうすれば受けていただける方の要望に合うかを考えながらチャレンジし続けるしかないと思います。

やってみる勇気、そして、何か起きたらリカバーできる能力、その2つがあれば何とかなるのかなと思うんですね。

若い先生を見ていても、もっとやってみればいいのにと思うんですが、なかなか、皆さんやらないですよね。

ヒアルロン酸注入は、よくわからない状態で「やっちゃえ」はいけない

──待合室で拝見しましたが、アラガン社のアラガン・ビューティー・アワードを受賞なさっていますね。

小西先生
ヒアルロン酸の注入を多く行ってきたからではないでしょうか。

ヒアルロン酸注入は全部、自分一人で行っています。注入を始めて10年以上になりますが、年間延べ1000人以上は注入していますね

──ヒアルロン酸注入は、ビギナーのドクターには怖いと言う方もいらっしゃいます。

小西先生
「怖い」と思えるドクターは良いと思いますよ。ヒアルロン酸注入は、よくわからない状態で「やっちゃえ」はいけません。

私も思ったようにいかなかったこともありますが、だからこそ、さっき言った「何か起きたらリカバーできる能力」が大事。

何かが起きてもリカバーが出来て、その後も患者様がずっと通って下されば、信頼されている証拠だと思うんです。

芦屋美容クリニック小西院長

形成外科で生きている組織を切った経験は大きい

──形成外科医で良かったことはありますか?

小西先生
切れること、ですかね。そして、注入治療をしていても、今、中でどうなっているか分かること

自分で切ったことがあるから中が分かるんです。カダバーとは違う、生きている組織を切った経験は大きいと思います。

そう言う意味では形成の専門医があった方が良いかもしれないですね。私も形成の専門医資格はずっと更新しています。

学会はあまり好きじゃないけど(笑)。

「センスは知識からはじまる」に共感

──美容医療にセンスは必要ですか?

小西先生
「センスは知識からはじまる」という本(※2)を呼んだことがあります。知識が無いとセンスも生まれないんじゃないですかね。

そう言う意味では、専門医という知識は必要なんじゃないですか。

センスは知識からはじまる※1『センスは知識からはじまる』

「くまモン」アートディレクションなどで話題の、日本を代表するデザイナー発「センスの教科書」。センスは生まれついたものではなく、あらゆる分野の知識を蓄積することで向上することを説く。顧客の嗜好が多様化する時代、スキルよりもセンスを磨くことで、仕事を成功させるノウハウを紹介する。
参考:amazon.co.jp/センスは知識からはじまる 水野 学/著

 

若い医師は幅広く見る経験をした方がいい

──美容医療への転科を検討しているドクターにひと言、お願いします。

小西先生
やりたいことやればいい、と思います。

自分の経験で言うと、「医局時代には良いオペを見ていたな」と今思うので、若い時には幅広く見る経験をした方がいいかもしれないです。

これしかない、例えば、埋没しかできないというのはやめた方がいい。武器が少ないとそれでしか勝負できなくなってしまうので。患者様のニーズに応えられるように、幅広く知っておくこと

そこはちょっと古いタイプに聞こえますが、古いタイプの最後の人間なんで(笑)。

──芦屋美容クリニックには、未経験のドクターは入職なさっていますか?

小西先生
未経験のドクターばかりですので、とりあえず、ピコレーザーから始めてもらいます。
今日の夜も、トレーニングが入っています。トレーニングは私が自ら教えています。

これからは世代間の美意識の違いが課題

──芦屋美容クリニックの今後の展開についてお聞かせください。

小西先生
私も年齢でだんだん眼が見えなくなってくる時が来る、その時に何をするか考えないとね。多店舗やっている人からは、「(自分でやるのを)早くあきらめろ」と良く言われます。

でも患者さんと話ができて、しゃべって帰ってもらい(笑)、時間が経ったら「ちょっとだけ治してもらおうかな」と、来てくださるのが嬉しくて、現場にいるのが幸せです。

患者さんも年齢が上がっていきますから、そこは大変ですよね。今の10代はプチ整形を見てきて20年後に30代になる。「自然」って怖いなと思うのは、実際に見てるものがその人の「自然」になること

私たちは、こんなに美容医療が盛んではない時代、画像としては見ない時代に育っていますが、今の若い世代は、プチ整形をやってることも「自然」な姿として、たくさんの画像を見て育っています。

ついていくのが大変です。こっちの方がいいよと思っても、きっとそこには絶対にズレが出てくると思います。

インタビュー後記

小西院長は芦屋と銀座を往復され、週7日勤務されているそうだ。そのような多忙な日々を送っているにも関わらず、小西院長は若々しく穏やかな雰囲気をお持ちであった。

美容医療のリピート率はドクターに依存する部分が大きい。小西院長のご経験・技術はもちろん、お人柄も患者様からの人気を得ているのだろう。

自分の「やりたいことをやればいい」という小西院長の言葉があった。同時に、やりたいことをやるには、それを支える知識と経験が必要だということも小西院長は伝えている。

芦屋美容クリニック

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