当直の負担を軽減したい医師に向けて、当直の負担やリスク、当直回数の多い職場の特徴、克服するための新たなキャリアの選択肢を紹介します。当直を負担に感じたときの対処法として、非常勤や美容医療業界など当直がない職場への転職についても解説します。
医師の「当直」とは、通常の診療時間外に病院に泊まり込み、入院患者の急変や救急患者への対応を行う勤務形態のことです。
医療法第16条で「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」という規定があるため、病院で働く多くの医師は基本的には当直勤務が必須となります。
当直中の医師は、ナースステーションや救急外来と密に連携し、チーム医療として対応するのが一般的です。
また、必要に応じて他科の医師と協議しながら処置方針を決定することもあります。
施設規模によっても当直体制は異なり、大病院では専従チームが組まれる一方、中小病院では常勤医師が交代で当直を担当することが一般的です。
以下では、当直の基本事項と法的背景を解説します。
当直の仕組みは施設によってさまざまですが、大きく「宿直」と「日直」に分かれており、両者を合わせて「宿日直」と総称されるのが一般的です。
宿直は病院に泊まり込んで夜間に対応する勤務で、日直は休日の昼間に対応する勤務のことです。
いずれも急変対応や救急患者の受け入れを想定し、待機時間中は病棟巡回やカルテ確認を行います。
宿直の場合は予定時間に仮眠を取ることが可能ですが、夜間勤務のため日中勤務である日直に比べると体力的な負担が大きくなります。
なお「寝当直」という言葉が使われる場面もありますが、この言葉に正式な定義はありません。
当直の主な目的は、入院患者の急変時や救急患者の受け入れに迅速に対応し、患者の安全を守ることにあります。
当直医は、24時間体制で患者を観察・治療し、生命に関わる緊急事態に対応します。
このように当直制度が整備されていることで、患者は夜間や休日でも安心して医療を受けることが可能になります。
特にICU(集中治療室)や急性期病棟には、一刻を争う治療が必要だったり、容態が不安定で急変の可能性が高い患者が多く入院しているため、患者ケアの質を維持する観点で当直制度は欠かせません。
夜間であっても医療提供を途切れさせないことが、医師にとっての重要な社会的役割といえるでしょう。
前述のとおり、医療法第16条では病院の管理者に対し、医師を宿直させる義務が明記されています。
医療機関は常に医療提供できる体制を保持せねばならず、患者の急変に即時に対応する責務があるためです。
この規定により、医療機関は24時間体制での医療提供を担保し、地域住民が安心できる環境を確保しています。
厚生労働省の調査によると、常勤医師の1か月あたりの宿直頻度は以下のとおりで、医師の間でもばらつきがあるようです。
(「医師の勤務実態について」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf)
0回/月 | 約43% |
1~4回/月 | 約43% |
5~8回/月 | 約12% |
5~8回/月 | 約12% |
9回以上/月 | 約2% |
ここでは、一般的な当直の流れと実際の仮眠時間について、診療科による当直の違いについて見ていきます。
ある病院の当直を例に挙げて、夜間当直の流れと業務内容を紹介します。
18:00~ | 通常勤務を終えて当直に入り、病棟巡回や引継ぎを行う。 |
21:00~ | 病棟消灯となり、仮眠時間が設けられる。 |
23:00~ | 夜食をとりながら、カンファレンスや検討を行う。 |
深夜帯 | 病棟巡回や待機をしながら、急変や呼び出しがあれば対応する。 |
翌朝8:00~ | 仮眠後に日勤医師に申し送りを行い、朝食をとる。 |
翌朝8:30~ | 通常の診療を再開する。 |
当直は日勤と連続するケースが多く、拘束時間が30時間を超えることも珍しくありません。
一般的な当直業務には、以下のようなものがあります。
このように、当直中は一人で幅広い業務を遂行しなければなりません。
また、常に緊急事態に備えなければならないため、精神的な緊張も伴います。
宿直の日は拘束時間が長いため、ほとんどの場合あらかじめ仮眠時間が設定されています。
しかしながら、急患対応が頻繁に起こる病院では、宿直中であっても予定通りに仮眠が取れるとは限りません。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査結果によると、常勤医師の宿直時の平均睡眠時間は以下のとおりです。
ほとんど睡眠できない | 3.5% |
2時間未満 | 5.8% |
2~3時間未満 | 10.4% |
3~4時間未満 | 27.7% |
4時間以上 | 52.7% |
(「勤務医の就労実態と意識に関する調査」https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
宿直がある常勤医師の約半数は、宿直時の平均睡眠時間が4時間未満であると回答しています。
ただし、働く病院や診療科、その日の病院の状況によって大きく異なるのが実情です。
当直の忙しさ・負担レベルは、診療科によって大きく異なります。
緩和ケア病棟や療養型病院での当直は、比較的ゆとりがあり、仮眠を取りやすい傾向があります。
これは、夜間の急変対応が少なく、当直中の業務も定期的な巡回などに限られることが多いためです。
一方、産科や救急外来を持つ病院では、夜間であっても頻繁に患者対応が発生します。
そのため、これらの診療科の医師たちは、十分な仮眠時間を確保できていないのが現実です。
長時間にわたる当直勤務は、医師の心身に大きな負担がかかり、リスクも伴います。
実際に、独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査では、医師が仕事で最も疲労を感じる項目に「当直(宿直及び日直)」が挙げられています。
(「勤務医の就労実態と意識に関する調査」https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
この調査結果は、医師にとって当直勤務がいかに重労働かを物語っています。
ここからは、医師の当直の実態について解説します。
医師の当直は、通常勤務と繋げて30時間を超える連続勤務となることも少なくありません。
「通常勤務→当直→通常勤務」という勤務パターンで、数時間の睡眠しか確保できないケースもあるようです。
このような超過勤務が慢性化すると、睡眠不足や疲労蓄積が常態化し、医師の健康や集中力に悪影響を及ぼす危険があります。
若手医師や研修医では体力的に耐えられる範囲が異なるため、研修先選びの際に当直負担を重視する医師も多くいるほどです。
当直後に続けて日勤をこなすと、睡眠不足による疲労と集中力の低下が顕著になります。
こうした状態で診療を続けた場合、当然医療ミスのリスクは上昇します。
事実として、医師が当直明け勤務でヒヤリ・ハットを経験することは、珍しいことではありません。
これらは医療安全にも影響する事例であり、現場では当直中の休息確保や二重チェック体制など対策が求められています。
医師の当直勤務では「ヒヤリ・ハット」と呼ばれる医療ミス寸前の事例が少なくありません。
当直中は、長時間労働と深夜帯の緊張状態が医師の集中力を奪うためです。
その結果、患者の症状見落としや処方ミスなど、重大事故一歩手前の事例が起きやすくなるのです。
こうした背景には、医師の働き方改革が十分に進んでいない現実や、宿日直許可の制度運用にバラつきがあることも挙げられます。
60秒で完了!
メール転職相談はこちら2024年4月から全面実施された医師の働き方改革では、当直を含む時間外労働に上限規制が導入されています。
ここでは、新しい規制内容と当直勤務への影響について整理していきましょう。
2024年度から、医師にも原則として年間960時間の時間外労働上限が適用されることになりました。
一般労働者と同様の基準ですが、地方医療の維持や研修・高度技能習得の観点から特例も認められています。
いずれの場合も、2024年以降は時間外労働の協定(36協定)で医療機関にも具体的な数値設定が求められています。
今回の改革では「宿日直許可」の有無が大きな分かれ道となります。
宿日直許可を取得している病院は、当直勤務が労働基準法上の労働時間規制の適用外となり、当直後も通常勤務が可能になります。
逆に許可のない病院の場合、当直も労働時間としてカウントされるため、手当支給や休息確保が義務づけられます。
実際に、許可のない施設でのアルバイトは禁止する方針の大学病院も現れており、民間病院でも宿日直許可を申請する例が増えてきています。
なお、宿日直許可は実際に患者対応がほとんどない当直にのみ付与されるため、夜間に頻繁に呼び出される場合に許可されることはありません。
働き方改革では、長時間労働者の健康確保策も導入されました。
具体的には、月の時間外労働が100時間を超えた医師には面接指導が義務づけられ、24時間以内に9時間以上の連続休息を確保する「勤務間インターバル」の制度も義務化されました。
このように、医療業界でも医師の連続勤務を制限し、睡眠を含めた十分な休息を担保する仕組みが整えられつつあります。
当直回数や頻度は、診療科や病院の規模、医療機関の特性によって大きく異なります。
ここでは、当直負担が多い職場と少ない職場の傾向を見ていきます。
当直の多い職場として、救急指定病院や産科、外科系の診療科が挙げられます。
(「勤務医の就労実態と意識に関する調査」https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf)
アンケートを見ると、産婦人科が月平均6回と最多であり、救命救急や総合診療、麻酔科でも4.5〜5.5回と高頻度です。
これらの科では二次救急を担うなど夜間の緊急対応が多いため、常勤医師に当直が多く回る傾向があります。
逆に、当直回数の少ない職場には慢性期医療や眼科、放射線科といった急患対応が少ない診療科があります。
緩和ケア病棟を持つ施設では、当直中に実施するのは定期巡回程度で済む場合が多く、当直回数自体も少なめです。
また、眼科や皮膚科など外来中心のクリニックでは救急呼び出しがほとんどないため、当直を求められないケースも多いです。
当直の負担は、病院の規模や人員体制にも左右されます。
常勤医師が少数で複数の科を兼務している中小規模病院では、当直が医局内で回りやすくなり負担が大きくなりがちです。
一方、大規模病院では診療科ごとに医師を配置することができますが、救急や産科などポストが少ない科には当直要員が集中します。
このように、施設の体制や人員配置によって当直回数に差が生じるのです。
過剰な当直回数を負担に感じた場合、実は様々な対策やキャリア選択があります。
ここでは、医師たちが実際に考えていることと、その対応策について紹介します。
医師の過半数は、当直を過重労働と感じているようです。
特に月7回以上の当直は、家族との時間や休息時間を圧迫し、睡眠不足や家庭生活への悪影響を招く恐れがあります。
このような高頻度の当直を長期間続ければ、心身の健康を損なうリスクも高まるでしょう。
医師としての経験を積みベテランになるにつれ、当直の負担に対する考え方も変化します。
特に50歳以上の医師の間では、身体的な負担を理由に当直免除を求める声がしばしば聞かれます。
実際に、年齢や家庭環境を理由に当直回避を希望し、非常勤や当直なしの勤務に移る医師も少なくありません。
当直の負担が重いと感じた場合、当直回数の少ない職場への転職や非常勤への切り替えという選択肢があります。
例えば、当直なしの美容クリニックや外来中心の病院では、当直勤務がほとんどありません。
転職サイトやエージェントを活用すれば「当直なし」「残業少なめ」など、こだわり条件で求人を探すことも可能です。
最近では、当直回数の上限を設けたり当直免除の条件を公表している医療機関も増えているため、自分に合った働き方を模索しやすくなっています。
ここまで述べてきたような当直負担の軽減をするためには、ドクターコネクトのようなエージェントを上手に活用することをおすすめします。
例えば、美容外科や美容皮膚科など美容医療クリニックの求人を選ぶことで、当直をせずに働くことが可能になります。
このような選択肢について、詳しく見ていきましょう。
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医師一人ひとりが思い描くキャリアは、人それぞれ異なります。
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実際に、麻酔科医が美容外科へ転科して長時間勤務から脱却したケースや、30代医師が美容皮膚科のアルバイトで年収を30%アップさせた例も報告されています。
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特に救急や産科では当直回数が多く、家庭や医師自身の健康への影響が無視できません。
2024年の働き方改革により労働時間の上限規制や勤務間インターバル制度が導入され、医師の働き方に変化が求められる時代に突入しました。
こうした中、当直の少ない職場や非常勤、当直なしの美容医療業界(美容外科・美容皮膚科)へ転職する医師も増加しています。
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